真空管ラジオ修理キッシー工房

戦前の骨董ラジオ・戦後の真空管ラジオの修理、および真空管アンプの設計・製作・測定・調整。

マニアの中では有名な「ナショナル当選号」の修理です。
前回、本体を調べると、回路図に比べてチョークトランスがない、低周波段間トランスが1個ない、平滑コンデンサが大きく変更されている、ボリウムの配線が不明・・・・などが見つかりました。

一番手に入りにくい段間トランスは、手持ちに1対6の使用可能な当時のものがありました。
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まぁ、これを使えばいいか・・・

ここで、本格的に調べます。
まず、電源トランスをチェックします。
配線を追っていきます。

チョークトランスを発見しました。
写真の右下にあるのが間違いなく、電源トランスと同じケースに同封されたチョークの端子です。
当時は電源トランスとチョークトランスが別トランスだけど、同じケースにピッチで封入してあることもありました。
チョークトランスがないと思ったら、ここにあったのですね。
最初は無接続の中継端子かと思った・・・
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まずヒーター(フィラメント)出力の導通を調べていきました。
224と227は並列です。導通あり。
112Aは導通あり。
226は導通あり。
112Bは導通あり。
ヒーター(フィラメント)出力はすべてOKでした。
100V入力は導通あり。

しかし、高電圧の0Vと180V間の導通がありません。
これでは+B電圧が作れません。これは致命的です。
テスターで適当に調べていた時には気づきませんでした。
さらにチョークトランスの導通もありません。
3kΩの抵抗は以前の修理者によりチョークトランスの替わりに後付けされたものでしょう。

新たな未接続(以前の修理者が不必要ではずした??)の個所もありました。
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これだからコンセントからのコードが切断されていたのですね・・・

これを完全に聴こえるように修理するとなると、
①電源トランスを手に入れる。
まったく同じものは不可能としても、似た電源トランスを探すしかありません。
今回のようにヒーター(フィラメント)だけでも4種類もあるトランスとは・・・困った・・・
もしヒーターはこのトランスに任せるとしても、少なくとも高電圧用に180V30mA程度のトランスを内蔵させる必要があります。
②チョークトランスをつける。
30H30mA程度のチョークトランスを取り付ける必要があります。
③段間トランスをつける。
1対3~1対6くらいの段間トランスを取り付ける必要があります。

これをやったら、修理というより、もはや改造になりそうです。
費用も時間もかなりかかりますし、新たにトランスを3台もつけるのですから、外観的にも骨董的価値はなくなります。
歴史的な「ナショナル当選号」の価値が台無しになるわけで、この修理は私にはできません。

N様、当工房で「できるでしょう」なんて請け負って申し訳ありません。
このまま、お返しいたします。
もし、貴方でこれと同じ電源トランスが手に入れることができましたら、修理はいたします。

807アンプの製作に対し、CPU.BUCH様、自作の友様、貴重なアドバイスコメントをありがとうございます。
807の三極管結合で第2グリッドに入れるわずか100Ωの抵抗が、寄生発振にこれほど関わるとは恥ずかしながら知りませんでした。第2グリッドとプレートとの直結が、プレート電流の揺らぎを引き起こすのでしょうね。同電圧だと真空管内で電子流が干渉するのかしら・・・・ 勉強になりました。

アンプ製作はちょっと間を空けて、今回は年末にN様から修理依頼をいただいているナショナル当選号の修理をします。
有名なナショナル当選号です。
何年間にもわたって改良されながら販売されていたため、多種類の当選号がありますが、今回は五球で高周波一段増幅のタイプです。

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見事にナス管で構成されています。
これはかなりの貴重品を預かっちゃったな・・・・

シャーシはツマミを外すことなく、簡単に取り出せました。
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バリコンもトランスも古そうです。

ん????
今はない、真空管の穴???
いや、穴の形状からすると真空管ソケットの穴でなく、コイルが取り付けてあった穴に見えます。
低周波トランスもちょっと違和感がある・・・
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シャーシの内部を見てみます。
昔のラジオは部品点数が少ない・・・
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んんん????
中央のこのコイル、戦後に発売された並四コイルじゃない????
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ここは配線が切れています。
でもつながり先がない・・・
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電源トランスの導通はすべてOK!!!! これだけでもラッキーです。
抵抗も値は経年劣化で高くなっていますが、まあ使えないことはない、といったところです。
ペーパーコンや電解コンは「すべて換えてほしい」という依頼者の要望ですので、取り換える予定です。

回路図がついていました。
現代の人が描いたものですね。
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しかし・・・回路図では2個あるはずのAFT、つまり低周波段間トランスがシャーシ上に1個しか見当たりません・・・ まさか、このケースの中に2個も入っているとか????
配線の本数からしてありえないか・・・

あれ、回路図の左の中央、「※のCRは銀色ケース内」と書いてあるけど、この銀色ケースはどう見ても古いオイルコンだけど???? 90kΩと400Ωの抵抗が入るとは思えない・・・・
でもこれは分解してみないとわかりませんね。

それにミニバリコンが2つも書いてあるけど、実際には一つです。

図にはある30Hのチョークトランスも見当たらない・・・

回路図の最先頭(左)のボリウムかスイッチは、UX-112の音量調整なのか、アンテナの信号量調整なのか・・・
実際は抵抗線回転摺動型のボリウムになっています。

回路図にある平滑部の電解コンも実際には見当たらないし・・・
何よりこの時代に平滑に2μFと4μFの電解コンを使うかな・・・ オイルコンだよね・・・

この回路図は、違う時期の当選号のものかもしれません。
さらに一度は修理されているようなので、その際に変わったのかも・・・・

難しそうですが、いろいろと考えながら修理をしていきますね !!!!!

先日のコメントで「CPU.BACH」 様から、発振防止にG1に100Ω、G2に数kΩを入れたらよいのではないか?  というアドバイスをいただきました。

大昔・・・送信管「807」は足元の内部シールドがないので高周波で発振しやすく、807をシャーシに数cmほど沈めて設置し、さらにブルーのピース(煙草)の空き缶でシールドしたものです。ピーカンシールドです!!!!! 
(晴天の青空もピーカンと言いましたね)
また、プレート出力が頭から出ているので出力コイルまで立体配線しやすいのだけれど、その分信号を空中にバラまくので発振しやすく、プレートキャップから高周波チョークを巻くのが必須でした・・・
しかし、今回は807を三極菅接続でつかうので増幅率はビーム送信管とはケタ違いに低いし、低周波を増幅するのだから、G1にもG2にも寄生発振防止の抵抗など必要なし、でしょう?????

正直、まさか低周波レベルで発振するとは考えもしませんでした・・・
現代の真空管アンプはG1の抵抗はそうでもないものの、G2の抵抗はG2の過電流防止のためにつけるのが普通です。
しかしRCAでもGEでも往年の回路図集では、807三極菅接続のオーディオアンプ例に寄生発振防止の抵抗はつけてありません。
だからも今回も、原因は自分の設計ミス、ずばり電源部のインピーダンスの値が高いからだろうと踏んでいました。
なぜなら今回の電源部は出力電圧を下げるために、ずいぶんとドロップ抵抗を何段も使って落としていますから・・・
さらに、807のプレート電流の一部はバイアスを決める6CG7カソフォロ用の-200V電源を流れますから・・・電源を介しての回り込み、いわゆるモーターボーティング発振、極低周波発振しても不思議ないかなって・・・

結果を言います。
「CPU.BACH」 様のアドバイス通りにしました。
発振は止まりました!!!!!   やったぜ!!!!!

まず、4本すべての807のG1と前段のカソフォロドライブとの間に1kΩ3W抵抗をいれました。
次にG2から出力トランスの間に100Ω10Wを入れました。
これはプレートキャップがハズレたりすると、G2に大電流が流れるので安全のためにもなります。
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そして、片チャンネルずつチェックするために、片チャンネル分の負荷電流を負担する抵抗を設置します。片チャンネル807の2本分の80mA程度を肩代わりするものです。
計算上では4kΩあたりでよいので、2kΩ5Wと2.5kΩ10Wを直列につなぎ、負荷としていれました。
中央やや右の赤い抵抗です。
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ところが、電源をつないだ途端、この2本の抵抗は煙を上げ始めました。
ああ、当たり前だわ !!!!!
350V4.5kΩでは、78mAで27Wですよね!!!!

さすがに真剣になりました。
4kΩ高耐電力抵抗を作ります。
手持ちのクラッド抵抗2kΩ25Wを二個直列にして、片チャンネルの負荷にします。
熱を逃がすためにアルミ板に取り付けました。
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片チャンネルずつ、電源をいれてみます。
おおお、発振が止まっている!!!!
しかも、ちゃんとボリウムで807の電流を変えられるじゃん!!!!
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鏡を敷いたので電流値がわかりますね。
右チャンネルも左チャンネルもきちんと作動しています。
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やったね。

ありがとうございます。
「CPU.BACH」様のアドバイス通りで無事に安定してプレート電流が流れました!!!!!

でも・・・不思議なことがあります。
通電時、G2につないだ100Ωの前後の電圧差は130mV程度。 
つまりG2に流れている電流は1.3mAです。
これなら直結しても問題にもならないじゃん、と100Ωの前後をコードでつないでショートさせてみました。
すると何も変わらず発振せずに異常なし。
そうか、発振の原因はG1だったのか・・・G2は発振とは関係なかったか・・・
それなら、100Ω10Wを4本とはもったいないじゃん(セメント抵抗は高価)!!!!
HAHAHA・・・・ケチって、外して元のように配線を直結に戻しました。
すると・・・再び発振してしまいました・・・
う~ん、理解不能・・・

こうやって、音は出るようになりました。
ただ、音量は大きくない・・・
感覚では最大でも数Wくらいのレベルです。
この後、バイアスを調整していけばもう少しは上がると思うけど・・・

この後は測定器を使って調整していきます。

何かご意見・ご質問・アドバイス等がありましたら、何なりとコメントをください!!!!!

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