前回までに外側の修理を終えましたが、今回はシャーシ内の配線修理も終了しました。

素敵なラジオに変身したと思います。
強固なベークライト製ボディに大型16cmスピーカーを使用し、内部に負帰還回路を持った高音質のラジオです。
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配線修理を振り返ります。
前回で通電したら、雑音しか出なかったのは、単に自分の配線ミスでした。
あろうことか、ランプの6.3Vをボリウムの入力側につないでいました。
ハム雑音でいっぱいになるのは当たり前です‥‥

よく壊れなかったものです‥‥HAHAHA‥‥

しかし、そこを修正しても、まだ小さな雑音しか出ません。

一度すべての真空管をはずして、6X4⇒6AR5⇒6AV6⇒6BD6⇒6BE6と後ろから一本ずつさしてはチェックします。
これができるのがトランス式の強みです。
(一般的なトランスレスだと全真空管をささないと始まらない‥‥)

まず、6X4だけをさします。
負荷がないので+300Vも出ています。
異常なし。

次に6AR5もさし加えます。
+B電圧は260Vに落ちました。
正常です。
しかし6AR5のカソード電圧を測定したら+28V!!!!   高すぎます。
カソード抵抗が400Ωですから、プレートと第二グリッドで70mAも流れていることになります。
明らかに過電流です。
そこでグリッド電圧を調べたら+15V!!!!   
んんん????  一瞬、頭が混乱します。
つまり28引く15で、電圧差が-13Vでグリッドが電流を制限していることになります。
標準では-18Vですから、この電圧では流れ過ぎるはずですね。

原因は6AV6のプレートから6AR5のグリッドにつながる結合オイルコンデンサの0.01μFの劣化です。
漏洩電流でプレートの+60Vが、アース電圧であるべきグリッドに影響しているわけです。
新しいフィルムコンデンサに替えました。
結果、グリッドは0V、カソードは-18Vに落ち着きました。
これで正常です。

ここでボリウムの入力側にドライバーの先で触れると、手の雑音が増幅されます。
オシレーターを使わずともよくわかります。
さらにボリウムを回すと手からの雑音量が変化します。
つまり6AV6は異常なし。
よし、ボリウムからスピーカーまで低周波段は異常なし!!!!

つぎに6BD6をさします。
電圧はOK。
普通に多少の高周波ノイズを発生しています。
ここまでの455kHzの中間周波増幅段以降は異常はなさそうです。

しかしトップの周波数変換段の6BE6をさすと、スピーカーからの音が変になりました。
雑音が出たり、止まったり‥‥ 不安定です。
周波数変換ノイズではありません。異常です。

6BE6を別のものに替えました。
すると、スピーカーから放送が聞こえてきます。
チューニングをするとちゃんと受信できます。
なんだ、6BE6の劣化だったか‥‥ HAHAHA

真空管の劣化による故障は、あまり経験がないです。
20年も使い続けて徐々に性能が落ち、パワーが半分以下になっても使えてしまいますから‥‥
その点、ブツッ!!! と切れる半導体とは違うのかな????

電源部の平滑用に電解コンを450V47μFと350V180μFを入れました。
6AR5のカソードにバイパス用の電解コンが初めから入っていなかっ たので、50V100μFを入れました。昔は電流帰還だ、ということでパスコンを外すことがありましたが、音質の向上には役立ちません。
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ランプを新しいものに替えました。
ヒューズも替えました。
これで配線の修理完了です。

ダイアル糸を張ります。
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指針の先は赤く塗り直しています。

キャビネットに収めます。
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裏ブタをして完成です。
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最終的に、6BD6は感度が二倍ある6BA6に替えました。
とてもいい音で鳴っています。
ただし外部アンテナ(単にビニル線)がないとほとんど受信できません。
何のためのバーアンテナなんだか‥‥

回路的にもとから6AR5のプレートから6AV6のプレートに電圧負帰還がかけられていて、雑音やハム音がキャンセルされるようになっています。
(6AV6と6AR5が逆位相のため電源のハム雑音が相殺されます)
そのためにパワーは減るけれど、音質はなかなか上等です。
ここはトランス式用の高電圧パワー管6AR5の面目躍如ですね。
音質を生かすために、無理して16cmスピーカーをのせた甲斐がありました。

今回はここまで。
さて、またコロナで商売ができなくなりそう‥‥
修理しても売れないのでは、たまる一方‥‥悲しいね‥‥